NEW BUSINESS新事業

当社は2018年4月に新事業推進部を新設し、農業、再生可能エネルギー等の新しい分野への取り組みを本格的に進めてきました。
新事業推進部は、SDGsへの貢献と脱炭素社会の実現に向けて、イチゴ観光農園を核とした地域活性化をめざす農業の運営をはじめ、再生可能エネルギー事業としての小型木質バイオマスガス化発電および小水力発電に取り組むとともに、グレンカル・テクノロジー株式会社との協業により、従来の方式とは異なる大幅なCO₂削減につながる低温プラズマ式乾燥機「レドックスマスター」の普及とその応用に向けた事業を展開しています。
また、2023年の冬からは、成長が早く、その過程においてCO₂を旺盛に吸収する特徴を有する「早成桐」の栽培事業にも着手しました。

これらの事業を確実に展開し、サステナブルな未来社会の実現をめざします。

執行役員 経営企画本部副本部長(新事業担当) 宮﨑 龍司

小型木質バイオマスガス化発電事業

半炭化した木質チップを燃料に、効率的な発電を実現

当社は2018年12月から、東京科学大学と木質バイオマスガス発電の共同研究を進め、その過程で半炭化の特質に着目し、同大学とガス化発電に関する共同研究を併せて開始しました。【発表論文:多樹種のバイオマス資源の過熱蒸気による半炭化熱処理材のガス化熱分解挙動の解析(木質炭化学会2022)ほか】

これらの共同研究により、木質チップは半炭化を経てガス化することで発電効率がより向上することがわかりました。そのため、これまで放置あるいは廃棄されていた林地残材や剪定枝、ダム流木等の低コスト材を発電燃料として利用することが可能となり、森林資源の有効活用が実現できます。また、エネルギーインフラの整備による雇用創出等の地域活性化カーボンニュートラルによるCO₂排出量の削減につながります。

半炭化装置について

本事業の中枢となる半炭化装置は、ロータリーキルン式炭化装置に過熱蒸気発生装置を取り付けたものです。キルン内のチップに直接、過熱蒸気を噴き付けて半炭化材を製造する計画で、開発する実証機は、毎時200kgの半炭化材を製造する仕様を想定しています。

ロータリーキルン式炭化装置
▲ロータリーキルン式炭化装置

1.既存チップ化施設等への導入が可能

半炭化装置は、剪定枝や流木をチップ化している既存施設等に導入が可能で、稼働している複数の小規模ガス化発電施設へ半炭化材の供給を行うことで発電効率を向上できます。また、従来の発電燃料であった乾燥木材に比べ、①低タール、②高発熱量、③低水分率、④疎水性といった半炭化材の特長を利用し、稼働率向上に寄与します。

半炭化装置の導入事例
▲半炭化装置の導入事例

2.地域開発のロールモデル

当社ではガス化発電の取り組みを踏まえ、半炭化装置の販売を通じ、市町村が抱える以下のような課題解決に貢献していきます。そして、地域エネルギーインフラの整備を進めていくことで、防災拠点の確保や新規雇用の創出など、地域開発のロールモデルにも成りえます。

市町村の抱える課題
  • 大規模発電所に依存しない、地産地消でエネルギーを自給したい
  • 防災拠点として、災害時にも熱電供給をできるようにしたい
  • 再生可能エネルギーを導入したい
  • 近い将来に向け、地域産業の後継者を誘致したい

  • 小型木質バイオマスガス化発電事業による地域振興

    小型木質バイオマスガス化発電事業を活用して、大規模発電所に依存しない開発地域内(市町村)で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築し、環境にやさしいまちづくりをめざしながら、地域の特色を活かしたインフラ開発およびエネルギーサービスを実施していく事業計画を立案します。

    CO₂削減と事業拡大の可能性

    本事業を通してCO₂の削減に大きく寄与するほか、土木・建築工事における地元企業のカーボンニュートラルへの活用、プラント運営に係る新規雇用の創出や人材育成、地域金融機関によるESG融資等を通じて、十分な地域活性化効果が期待されると共に、地域企業が主体となり課題解決に資するプロジェクトになります。

    低温プラズマ式乾燥機の販売事業

    レドックスマスター®乾燥機は、グレンカル・テクノロジー㈱が開発したプラズマ式イオン等発生装置(MIRA=Mixed Ion Reactive Approachシステム)が発生させる複数種のイオンにより、水どうしの水素結合を分断して低クラスター化することにより乾燥促進を行う画期的な円筒形撹拌乾燥システムです。従来の熱源乾燥機と異なり20℃~60℃程度の低温で処理するので、乾燥のために必要なエネルギーが極めて低く、処理コストも大幅に低減できます。

    この特徴から本機で乾燥させた生成物は素材の酸化・炭化を防ぐという利点があり「乾燥」における多種多様な利用法が生まれ、多方面への本機の販売に対応するため、当社のグループ会社であるテッケン興産㈱がグレンカル・テクノロジー㈱と「販売特約店契約」を結び、レドックスマスターの販売に取り組んでおります。
    ※テッケン興産㈱にレドックスマスターの販売を目的として新事業推進部を新たに設立(2023年7月)
    また、千葉県成田市にある当社の建設技術総合センター内に2023年8月にレドックスマスター実験等を完成させ、乾燥実験の受託やバイオマス原料の開発とレドックスマスターの普及に取り組んでいます。

    MIRA=Mixed Ion Reactive Approachシステムによる
    ▲MIRA=Mixed Ion Reactive Approachシステムによる
    低温プラズマ式乾燥機 レドックスマスター設置例
    ▲低温プラズマ式乾燥機 レドックスマスター設置例

    レドックスマスター®の活用領域
    ▲レドックスマスター®の活用領域
    レドックスマスター®実験棟
    ▲レドックスマスター®実験棟

    いちご観光農園事業

    コロコロいちごファーム看板

    コロコロいちごファーム

    2019年4月に「いちごの観光農園(コロコロいちごファーム)」を運営する㈱ファーム ティー・エスを設立しました。いちご狩り期間である1月~5月の間は毎年約3,000名のお客さまが来園され、農園スタッフが丹精込めて育て上げたいちごをお楽しみいただいております。
    また、2024年12月には、千葉県野田市に「コロコロいちごファーム ガーデン 千葉農園」をオープンし、今後も「食と農を通じて、地域発展へ貢献すること」を目的に、更なる地域活性化や地域間交流の促進に寄与してまいります。なお、いちご狩りのご予約はコロコロいちごファームのホームページ及び予約サイト「じゃらん」にて受け付けております。(5月のゴールデンウィークまで)

    コロコロいちごファームWebサイト

    ▲コロコロいちごファーム 埼玉農園
    ▲コロコロいちごファーム ガーデン 千葉農園

    小水力発電事業

    当社は、事業分野の多角化、環境配慮型事業への参入等を目的に、㈱飯塚工業他2社と共同で、山梨県大月市内で小水力発電事業(固定価格買取制度※1)を行うTKアクアグリーン㈱を2023年10月に設立しました。
    当事業は、2022年8月30日に、山梨県より「山梨県有林内における小水力発電推進事業者」に選定されたことに伴い開始されたものです。その後、山梨県と「県有林内における小水力発電事業の実施に関する協定」(2023年4月付)、大月市と「真木川発電所活用における地域協力協定」(2023年4月付)を締結すると共に、関係者との協議が整ったことから、TKアクアグリーンを設立しました。今後は、2025年12月運転開始(予定)に向けて、設計・手続き等の準備を進めてまいります。
    ※1 固定価格買取制度:再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買取ることを国が約束する制度。(経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより)

    会見
    ▲地域協定締結式の様子(小林大月市長と伊藤社長)
    取水地点の堰堤
    ▲取水地点の堰堤
    取水施設全体 真木川下流部からのイメージ
    ▲取水施設全体 真木川下流部からのイメージ

    早成桐栽培事業

    早成桐(ジャパロニア)とは、桐と広葉樹の交配で開発された桐で、通常の桐は成木になるまで15~20年かかりますが、早成桐は約5倍の速さの4~5年で成長します。また、伐採しても切り株から再び新たな芽を出し成木へ成長する『萌芽再生』を、5年サイクルで4~6回以上繰り返すという特徴を持ちます。そして成長過程においてCO₂吸収量が旺盛であることから、大幅なCO₂削減が期待できます。
    当社は知的財産・育成のノウハウを保有する一般社団法人クール・アースと業務委託契約を締結し、令和5年11月に新潟県長岡市の約5㌶の未利用農地に3,000本の早成桐を植樹し、育成を開始いたしました。
    成木後伐採した材木(丸太)は、建築仕上げ用合板として製造、またはその他建築用建材・家具材として利用する予定です。端材はバイオマス発電燃料やバイオ炭として活用し、完全循環型、地産地消を構築し、地元産業の創生にも貢献してまいります。

    ▲植樹
    ▲早成桐(植樹後約1年半の例)
    ▲萌芽再生